家賃滞納で立ち退き強制執行までカウントダウン!決断の時が来た
「もう限界・・これ以上支えきれない・・」
お店の経営者からひっきりなしに相談の電話がかかってくる。
経営者は弱音を吐くような人物ではなかったが、さすがに顔色は悪く痩せてしまっている。
ひょっとしたら病気になっているのかもしれない。(後からわかったことだが、この時期に心労がたたり軽度の癌になっていたようで、手術をしていたそうだ。お金がないので入院できずに手術してすぐ退院したとのこと)
守秘義務があるので細かなことまで書くことはできないが、実は経営が悪化したのは、この経営者のせいではないことは明らかだった。
ある事情から経営を引き継ぐことになり、経営を引きついだ時点で既に経営状況は借金で火の車だったのだ。
経営者の資産も全て金融機関に抑えられるという状況だったので新規の借り入れなど全くできない。
もう絶体絶命のピンチ。
だからこそ、僕は素直に経営者の弱音を聞くことができた。
会社を経営していればいくつかのピンチを必ず迎える。
その中でも返済ができないことは相当なストレスだが、乗り越えることはできる。
しかし、強制執行の通知が来ると緊張の糸が切れたようになり精神的に乗り越えることができなくなる。
これは実店舗の場合は営業停止を意味するから当たり前だが、事務所などでも同様な精神状態に追い込まれる。
この経営者も同様だった。
僕は相談されても何もできない歯がゆさと自分の無力さに失望した。
会社の損益計算書も確認したが、それはもう絶望的な状態であり虫の息といった具合だった。
マーケターとしての視点で判断しても最悪だった。
お店はターゲットとなるお客様が全くいないエリアで出店していた。
前経営者がなぜこの立地にしたのかが全く理解することができなかった。
ただし、一つだけ良い点があった。
それは人材だ。そのお店はサービス業であったため人材に恵まれていることは大きな利点になる。
「しかしそれが今更何になる・・・?それを生かせないのなら経営者としての資格はないだろ・・」といった思いが頭から離れなかった。
僕がこの店の再生に取り組む気がなかったのはこの気持ちが強かったためだ。
マーケティングはボランティアではない。
戦略を考えることは「思いつき」ではないのだ。
そこにはデータを集める費用が発生し、戦略を考えるための時間という費用が発生する。全てはコストがあるのだ。
これは今でも揺るぎない。
しかし、経営者の青ざめてやせ細った表情から吐き出す弱音を聞いた後、心が少し動いてしまった。
僕は呟いた「どうにか救えないものか・・・」
色々なことが頭をグルグルと駆け回っていた。そして知らぬ間に同業他社のお店に入っていた。
そのお店をぼんやりと眺めているとあることに気づいた。
それは、今にも潰れそうなあの店の方がはるかにスタッフの質が高いということ。
実際に現場を比較してみるとそれは明らかな違いだ。
しかし僕が知らず知らずに入ったその店のスタッフの方が輝いて見える。
僕は給与が遅れても文句も言わずひたむきに頑張っているスタッフのことを思い出し、とても不憫でならなかった。
そしてとても悔しい思いが徐々に湧いてきた。
「やってみるか・・・」僕は再度呟いた。
もう強制執行まで45日しかない秋口のことだった。
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